訪問サービスを通して思うこと
人生の先輩である方々ばかりなので、尊敬の気持ちをこめて接しています
今回は「通い」後、そのまま利用者さんを車にのせて自宅まで送迎。降りるときにお手伝いします。
―訪問介護をする方の家は事業所から近いのですか?
髙橋さん:基本は地域の方なので、自転車や徒歩で行ける距離が多いです。ただ、「通い」を利用された方が自宅に帰宅した後の訪問もあるので、車で送迎する際、一緒に添乗したり、私自身が運転してそのまま訪問するケースもあります。
利用者さんと一緒に会話をしながら料理をささっとつくる。今日のメニューはうどんと大根の煮込みなど。
―髙橋さんが訪問サービスをするうえで気をつけている点は?
髙橋さん:そうですね・・・・・・。「相手の立場にたって行動すること」でしょうか。実は、「ひつじ雲」を利用する9割が認知症の方たち。でも「認知症だからこうしなきゃ!」という固定概念を持って接することはせず、私はあくまでも人生の先輩である高齢者の方々として、尊敬の意をこめて接しています。
―認知症の方の介護において気遣われている点はどういうことですか?
髙橋さん:例えば、モノの記憶が曖昧になる方が糊をマヨネーズと思い込んで出してきたとします。それに対して「間違っている」と否定はしません。本人は間違えて出したつもりはないので、私も「ありがとう」と受け取ります。ほかにも、冷蔵庫から既に出した食材を忘れて、また取り出したりすることもあります。その場合は、タイミングを見計らって次の行動にうつるよう言葉をかけます。
決して否定はせず、利用者さんの行動を受け入れながら動くのがポイントですかね。
介護者だけでなく、その周辺の人とのつながりも良くしていければいいですよね
近所の方とすれ違うときに「こんにちは」と挨拶する高橋さん。ワンちゃんにもこのなつかれよう。
―髙橋さんは、利用者さんの近所に住んでいる方とも、親しくされていると聞きましたが…。
髙橋さん:認知症の方と近隣の方との問題はとてもデリケート。
例えば、本人は自分の家に咲いている花だと思って、近所の家のをつんでしまう。いくら長年付き合いがあったとはいえ、それが積み重なっていくとだんだん距離を置かれ、溝が深まっていくこともあります。
そんな時、私達が利用者さんと近所の方をつなぐ架け橋になれればと思うんです。利用者さんが暮らしやすい環境を整えていくのも私たちの仕事のひとつではないかな、と。
―認知症は理解されにくい病気だからこそ、苦労されることも多いでしょう?
髙橋さん:そうですね。でも得ることもたくさんありますよ。みなさん、私より多くの経験を積んできた方たちなので、逆に教わることも多くて。
―印象的なエピソードとかありますか?
髙橋さん:この仕事を始めて半年ぐらいの時でしょうか。精神的に落ち着かず、もちろん現場では笑顔を絶やさずいたつもりだったんですが・・・・・・。ある些細なことで、認知症の方から「なんだ、この野郎!」と突然怒鳴られたんです。驚いたと同時に、ハッとさせられました。表面上ではいくら笑顔でもその裏にある何かを見透かされたのかな、って。「利用者さんには嘘はつけない!」と心から感じました。 この出来事をきっかけに、仕事に取り組む姿勢も良い方向へと変わっていった気がします。