■利用者さんに「ふつうの暮らし」を楽しんでもらいたい。それが理想です。

▲機械浴室にて。入浴介助後、職員と楽しそうに談話する利用者さん。
―こちらの「特定老人保健施設 サン・くすのき」では、様々なサービスを取り入れているんですね。
清水さん:はい。私たちは施設にいながらも、家にいるような“ふつうの生活”を利用者さんに楽しんでもらいたいと思っています。そのため、施設内には様々な工夫を取り入れているんです。
―どのような工夫を取り入れているのですか?
清水さん:今日は、90人いる利用者さんの半分に当たる50人の機械浴を一日がかりで行います。利用者さんたちは機械浴から一般浴まで、症状に合わせて週に3回はお風呂に入れるようになっているんですよ。
―週3回というのは、これだけ沢山の利用者さんがいらっしゃる施設では多いほうなのでは?
清水さん:はい。私たちも機械浴の浴槽を4台に増やしたばかりなので、様子を見ながら試験的にスケジュールを組んでいる最中です。しかし利用者さんにとって、温かいお湯に浸かるのは何よりの楽しみですから、できるだけお風呂の回数は増やしたいと考えているんです。お風呂以外にも、様々な新しい試みを行っています。

▲アロママッサージを受けながら会話をする場も、利用者さんにとっては憩いのひととき。
―例えば、どんなことを行っているのですか?
清水さん:施設内にアロママッサージのサービスを受けられる独立したエリアを設けています。介護職員がアロママッサージの認定証を取得し、業務の合い間にアロママッサージ師としてサービス対応しています。こちらは、一般の方やご家族の方でもサービスを受けることができます。施設の利用者さんは全員無料でマッサージを受けることができるため大人気で、1~2ヶ月の予約待ち状態です。マッサージの終了後には爪のお手入れも行っているので、利用者さんも普段なかなかお手入れのできない部分がきれいになると、とても喜んでいらっしゃいますね。またデイサービスの方や入所フロアの方には、足元からリラックス効果を促す「ひのきの足湯」も利用していただくことができます。

▲足湯に浸かる利用者さんたちは、とても気持ち良さそうだ。
こうしたリラクゼーション設備の他、ここ1年の間には食べたいものを好きなように食べてほしいという思いから、飲料水の自動販売機やアイスクリーム売り場の設置も行いました。アイスクリームは、栄養価が高いので、栄養吸収の困難な高齢の方には進んで食べていただきたいくらいなんですよね。特に冬は乾燥しがちなので、口腔内の保湿や水分補給にもなりますし。今では「アイスクリームの日」を作り、週に一度はアイスクリームをおやつのメニューにしています。あと毎週土曜日には「ケーキの日」も設けて、ケーキ職人さんが利用者さんの目の前でデコレーションを行ってくださるので、利用者さんはこちらのイベントも、とても楽しみにされています。
こうした施設内の設備やサービス以外に私たちが力を入れているのは、利用者さんの外出なんです。

▲誕生日の利用者さんには、職員全員からの寄せ書きと似顔絵が書かれた色紙が贈られるという。
―なぜ外出に力をいれていらっしゃるのでしょうか?
清水さん:普段、施設の中で過ごしていらっしゃる利用者さんに、ご自身の目で見て、肌で感じるという経験をなるべく多くしていただきたいからです。外出なさったときの利用者さんは、表情が生き生きとしていて本当に嬉しそうなんですよね。普段は食欲がなかったり、全介助だったりという利用者さんが手づかみで自分から率先して食事をなさいます。そういった姿が見られると、外の空気に触れて食を満たすことが、どれほど大事かというのを痛感させられます。
今年の春には、経管栄養で介護度が4以上の方も含めた利用者さん全員で近くの桜が見える場所まで、お花見に行きました。施設ですと、どうしてもリスクを考えがちになってしまう傾向にあるのですが、何とか実現したいと思ったんです。「体が自由に動かないから、外に出られない」と妥協はしたくありませんでした。無理だと考えられていたことが、こうした思い切った行動によって実現できてくると、もっとありふれた日常を利用者さんに提供できる可能性は、まだまだあるのではないかと思えるんです。
―今後、外出で利用者さんを連れて行きたいと思っているところはありますか?
清水さん:実物の富士山を見ていただきたいですね。ここからだと3時間半はかかりますから難しいのですが、いつかは…と考えています。こうした当たり前のことが利用者さんに提供できるようになれば、と思いますね。


