■共通の話題が、お互いの距離を縮めるんです。
▲利用者さんとコミュニケーションするために覚えたという切り絵。
―こちらの利用者さんに傾向はありますか?
田村さん:ひとりの生活に不便を感じていたり、身寄りがいなくて寂しい思いをしている、ひとり暮らしのお年寄りの方が多いですね。
―ひとり暮らしの利用者さんとの接し方で大事なことはありますか?
田村さん:コミュニケーションを交わすことでしょうか。体が不自由なひとり暮らしの利用者さんの場合、外に出られないので、誰とも接する機会がないまま1日が終わってしまうというのはよくあります。家の中ではテレビを見て過ごせるけれど、テレビは一方的に話しかけてくるだけですから、一方通行のコミュニケーションになってしまいます。ですから会話を交わすことに重点を置いて、利用者さんと接するようにしていますよ。
▲利用者さんと話しながら掃除を進める田村さん。
―利用者さんとの会話がうまくいく「コツ」はありますか?
田村さん:共通の話題を持つことですね。ある男性の利用者さんで、担当するヘルパーさんが次々に交代するという方を担当したことがありました。そのときは考え抜いた結果、共通の話題を探すことにしたんです。
それ以前に、趣味の話などを持ち出すと、楽しそうに話していらっしゃる利用者さんを多く見ていましたから、この利用者さんも、ご自分が好きなことの話題だったら心を開いて接してくださるんじゃないかと思ったんですね。
―具体的には、どんな話題だったんですか?
田村さん:切り絵です。切り絵を趣味にされていた利用者さんだったので、共通の話題を作るために、三鷹市シルバー人材センターの切り絵教室へ通うことにしたんですよ。利用者さんの考えも理解できるようになるんじゃないかな、という思いもありました。
そして利用者さんのところを訪問するたびに切り絵の話題を出すと、なんとなく会話が続くようになっていきましたね。「もの好きだな」って言われましたけど、少しずつ穏やかな態度に変わっていく利用者さんを見ると、私も嬉しい気持ちになりました。
>▲利用者さんの状態に合わせて、その日の作業を決めるとか。この日は天気が悪いため、お買い物は中止した。
ヘルパーは、常に利用者さんの目線で考えて動くことが大切だなと思います。利用者さんを理解するには、まずこちらから心を開いていき打ち解けることですよね。
オープンな態度で接していくと、かたくなな利用者さんも少しずつ柔らかな態度で接してくださるようになるんです。この仕事を始めて、コミュニケーションって難しいなぁと、痛切に感じています。