心と心のお付き合い ― コミュニケーションを上手にとることが大切
▲カンファレンスのため、利用者のご自宅へ。
―介護には様々な技術が必要なんでしょうね。
鈴木さん:介護に必要なのは技術や知識だけじゃないんですよ。介護は「心と心のお付き合い」ですからね。一番必要なのはコミュニケーションだと、私は思っています。
―それはなぜですか?
鈴木さん: 私たちは時間単位で利用者のご自宅にお伺いして生活の援助をしています。でも、毎回同じヘルパーさんが伺うわけじゃありません。色々なヘルパーさんが、毎回同じ時間で、同じサービスを提供するわけです。ところが、同じサービスを行ったとしても、ヘルパーさんの個性や経験によって、それぞれに微妙な違いが発生してしまいます。そこで出てくるのが「コミュニケーション」の問題なんです。
▲ご家族と話す鈴木さん。その口調は、とても優しく丁寧。
―素人からすると、「コミュニケーション」よりも「技術」のほうが大事な気がしますが?
鈴木さん:いいえ、そんなことはありませんよ。
確かに、専門的な援助を行うためには様々な知識や技術が必要です。でも、それは日々の仕事の中でも培われていきますし、わざわざ教えなくても経験として身についていくものだと思うんですね。だから、基本的な知識と学ぶ意欲さえあれば、援助や介護の技術はいくらでも向上していくものなんですよ。でも、「コミュニケーション」はそうじゃない。どんなに介護の本を読んだって、大雑把にしか書かれていません。たとえ細かく書かれていても、結局はケースバイケース。それに、その人の持つ個性とも関係していますからね。
―うーん、なかなか難しいですね。
鈴木さん:口で言うのは簡単ですが、コミュニケーションをとるというのは実はとっても難しいことなんです。介護の現場では、それぞれの利用者に合わせたコミュニケーションが、利用者の数だけ必要です。
自分なりにひとりひとりに合ったコミュニケーションを探して、それをキッカケとして互いに信頼しあえる関係を築いていかなきゃいけないんですよ。
―コミュニケーションの壁があるわけですね?
鈴木さん:ええ。でも、私たちもこれだけは教えてあげられない(笑)。コミュニケーションを上手くとるコツは教えられるけれど、それはあくまでも参考意見でしかないんですよ。コミュニケーションのとり方に、これといった正解はありませんから。
―コミュニケーションひとつで、そんなにも違うものなんですか?
鈴木さん:全然違いますよ(笑)。
コミュニケーション能力が高いヘルパーさんに対しては、利用者さんからの苦情は殆どありません。しかしコミュニケーションがぎこちないと、それが原因で苦情に繋がってしまうんです。同じ援助をしたとしても、コミュニケーション能力が高いほうが利用者やご家族からの評判はいいんです。
私たちも利用者も、みんな人間です。機械じゃありませんからね。だから「感情」というものがあります。同じサービス、同じ時間であっても、コミュニケーションがしっかり取れているかどうかで、利用者さんの気持ち=感情は大きく変わってしまうんです。
―満足感が違うんでしょうね。
鈴木さん:そう、違うんですよ。満足感を得られないとだめなんですよ。これは施設とはちょっと違いますよね。施設じゃ勉強できないことだし。訪問の場合、生活スタイルも環境も、家族構成もひとりひとり違いますからね。ヘルパーさんはそこに入って仕事をしなくちゃいけない。だからこそ、コミュニケーションの質にはこだわって欲しいですね。