「個人の尊厳」がなかなか守れていないという現実があります。何故でしょうか?
悪意があるわけではないのに、油断すると無視や軽視が生まれてしまいます。
前回に引き続きもう少し事例を見てみましょう。
(1)80代女性のケース
昼食介護に伺っているが、ご家族に「排泄の介護が大変だから準備されたもの以外は食べさせてはいけない」と言われる。しかし、ご家族が用意する食事は単品で、しかもほんの少量。それを見ると辛くなる。
(2)認知症の高齢女性のケース
「○○ちゃん」と呼ぶと言うことを聞いてくれるので、「○○ちゃん、口を開けて」などと声をかけて身の廻りの世話をしていた。それをご家族に「馬鹿にしている」と指摘され、無意識に幼児扱いしていたことにはっとした。
(3)独居の90代男性のケース
ガス漏れや火事の危険があるとして、利用者本人の意思を無視して周囲の関係者が台所のガス台を撤去し、IHクッキングに切りかえた。利用者はこれを嘆き、大きな紙に「コワサレタ!ヌスマレタ!」と書いて戸に貼っている。
(4)トイレと食事の介助を行っているケース
脳梗塞、人工関節でトイレ介助と食事介助に伺っているが、ある時、下半身裸でポータブルトイレに腰かけたまま食事をしている利用者を目撃した。ご家族に抗議をしても「分からないからいいわよ」と言われるだけで、何も改善されない。
本人のため、という大義名分でこんなことが行われています。
介護とは「なすがままにされてしまう」ものなのでしょうか?
次回は「どうすべきか」を考えてみましょう。