平成18年の介護保険制度の改正によって、従来の訪問介護給付サービス市場は大幅な減少に見舞われましたが、給付サービスの内訳の変化を要介護度別、提供サービス種類別に見ると以下のようになっています。
【要介護度別件数、費用】
要介護度別では、当然ながら新要支援制度の導入に伴い、旧要支援者(経過的要介護者)、要介護1の(従来の)訪問介護給付サービス受給者は、改正前(06.3月時)に比べて08年3月時で合わせて▲507千件の減少、費用は▲158億円/月の減少になっています。一方、増加しているのは要介護2、3の受給者で合わせて77千人、費用は23億円/月の増加をみています。しかし、要介護4、5の重度要介護者は合わせて10千人、費用の伸びはわずか4億円/月にとどまっています。
要介護2、3の増加受給者の大半は旧要支援者、要介護1からの移行者と考えられるので旧要支援、要介護1の軽度要介護受給者における(従来の)訪問介護給付サービスの実質的な減少は、受給者▲430千件、費用▲135億円/月、年間では約▲1,620億円の減少と推定されます。
【要介護度別、提供サービス種類別】
改正後2ヵ年経過後の提供サービス種類別の変化(増減)は、以下のとおりで、提供サービス種類別では、『生活援助』サービスが、利用者の多かった軽度要介護者受給者の減少を受け、給付回数で▲42%、給付単位(費用)は▲49%の大幅減になっています。
給付回数を上回る給付単位の減少は、今回の改正による生活援助の利用制限効果を反映したものと言えます。また、受給者の増加がみられたにもかかわらず、要介護4、5の重度要介護の生活援助給付が回数、給付単位ともに減少をみるなど、生活援助サービス全般への利用制限(給付管理)が浸透していることがうかがわれます。また、生活援助サービスの減少を受け、『身体介護+生活援助』サービスも生活援助と同様に全体及び重度要介護者においても減少しています。
一方、従来の訪問介護給付受給者が中重度要介護者へとシフトしたのに伴って、『身体介護』サービスは給付回数で10%増加しているが、給付単位の増加は4%にとどまっており、身体介護給付サービスにおいても短時間サービス化進んでいることがうかがわれます。
【自費サービス需要の見通しと事業者の二分化】
改正後の訪問介護給付サービス市場は受給者の中重度化と『身体介護』サービスへのシフト、また生活援助をはじめとする給付サービスの利用制限(給付管理)が浸透していますが、一方で予防訪問介護利用者を含め(従来の生活援助を主とする)サービスの提供を自費で求めるケースも増えています。改正により減少した従来の訪問介護給付サービス市場(需要)の大きさからみて、今後、自費サービス市場(需要)がより一層顕在化してくることが予想されます。
これに伴い、訪問介護サービス事業者も、中重度要介護者(保険給付サービス)を対象に身体介護サービスに力を注ぐ事業者と、生活援助サービス(自費サービス)の開拓に取り組む事業者へと分化していくことが予想されます。