平成30年4月をもって全国の市区町村の新総合支援事業(以下、総合事業)への移行が完了しました。この総合事業の実施主体は市区町村で、地域の実情に応じて実施するという特性があります。総合事業の訪問介護サービスには「国基準相当型」「市区町村独自基準型」「住民主体型」「ボランティア型」などの混在が予測されており、総合事業における訪問介護サービスは今後、多様な事業者の参画によって多様化が進むと考えられています。
この状況をサービス利用者側の立場で考えると、予算やサービスの質・量を自身で選ぶことができるため、総合事業の訪問介護サービスは、利用者の生活実情に応じた自由選択制という風にも言い換えられます。年金が少なく必要量のサービスが受けられない人にとって、利用料の安いボランティア型訪問介護や住民主体型訪問介護は、喜ばしいサービスとして期待されることでしょう。
このように多様な訪問介護サービスが可能になる総合事業において、サービス提供責任者(以下、サ責)が考えなければならないのは、専門職としての役割でありプライドです。まずサ責は、介護専門職を行う訪問介護サービスと他の訪問介護サービスの差別化を具体的に考えなければいけません。また、差別化の推進において、総合事業の仕組みや自分達の立ち位置、専門性、介護専門職としての役割をサービス利用者及びその家族に正しく伝える説明力が必要になります。さらにサ責は、自身で説明できる能力と訪問介護員が説明できるよう教育する役割もあります。つまり、チームリーダーとして、チームメンバーである訪問介護員の知識や意識向上を図るのもサ責の大切な仕事です。
総合事業の移行によるサ責の新たな課題は、サービス利用者及びサービス提供者に生じる様々な混乱を防ぎ、より効果的・効率的に訪問介護サービスを提供することでしょう。この新たな課題と真摯に向き合う専門職としてのサ責の言動が、多様な訪問介護サービスの役割を明確にし、適切なサービス活用を実現させると私は考えます。総合事業における訪問介護事業の円滑化は、サ責の役割認識や制度理解などに左右されると言っても過言ではありません。また、地域の福祉力向上や支え合い体制の構築においても、総合事業における訪問介護サービスのあり方が今後鍵になってくるのは間違いないと考えています。