在宅患者の方に私がお薬を届けて、早16年になります。この16年を振り返って、時々考え込んでしまうことがあります。それは、「便秘薬」が在宅の現場でなかなか効果的に使われていない、ということです。私達の営みの中で一番大切な、『食べることと』『排泄すること』が上手に出来ていないことになります。
食品の栄養素が小腸に吸収された後、大腸で水分が吸収され糞便ができるのが、健常時の便です。便秘とは、大腸に糞便が長くとどまって硬くなり、出にくくなる状態のことをさします。排便が3日に1回で、ウサギのようなコロコロした硬い便が少ししか出ない場合を便秘といいますが、ひとくちに便秘といっても、個人差があるため、3日に1回でも気持ちよく排便していれば便秘とはいいません。私が訪問している患者の方8割強が便秘治療薬を処方されています。
便の硬さ、形状は「ブリストルスケール」と呼ばれる国際的に共通の便性スケールがあります。
便秘になったから・・・とすぐに便秘薬を使うのではなく、まず生活習慣を見直してみましょう。それでも改善が見られなかった時に便秘薬を使いますが、便秘薬も下記のように、便のかさを増やしたり、便の表面を軟らかくしたり、腸管に水分を呼び込んだりするお腹に優しい緩下薬から、大腸を刺激して無理やり出させる大腸刺激の下剤など、色々な種類があります。
医師から出される便秘治療薬も、薬局で買う一般用医薬品も、同様に医師や薬剤師などのアドバイスを受けてから使うことをおすすめします。
商品名 | 分類 | 働き | |
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緩下薬 | バルコーゼ | 膨張性下剤 | 便に水分を吸収して膨張し、腸を刺激して排便を促す。 |
ビーマスS | 浸潤性下剤 | 便の表面張力を低下させ、便を軟かくして排便を促す。 | |
酸化マムネシウム マグラックス マグミット |
塩類下剤 | 腸で吸収されにくい水溶性塩類によって腸内水分が吸収されず、腸内容が多くなることにより排便を促す。 | |
刺激性下剤 | アローゼン アジャストA プルゼニド ラキソベロン |
大腸刺激剤 | 腸粘膜や腸の神経を刺激して腸の蠕動運動を亢進させ排便を促す。 |
ヒマシ油 | 小腸刺激剤 | 小腸粘膜を刺激して排便を促す。 | |
漢方薬 | 潤腸油(じゅんちょうとう) 大黄甘草湯(だいおうかんぞうとう) |
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坐薬 | 新レシカルボン | 腸内において炭酸ガスを発生させて、腸を刺激し排便を促す。 | |
テレミンソフト | 直接、腸を刺激して排便を促す。 | ||
浣腸 | グリセリン浣腸 | 直腸への注入により、腸内の水を吸収して腸を刺激して排便を促す。また、浸透作用により便を軟化し排便を促す。 |